鳥居

「ミルグラムの法則」は、心理学者スタンリー・ミルグラムによって提唱された理論で、「人は権威に盲従する」という人間心理を示しています。この法則は、ミルグラムが1960年代に行った実験に基づき、人々が上位者からの命令に対し、たとえ非人道的なものであっても従ってしまう傾向があることを示しています。

この実験は、ナチス・ドイツのアドルフ・アイヒマンの裁判に触発されたものです。アイヒマンは、ユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の主要な実行者でありながら、自らの行為を「ただ命令に従っただけ」と主張しました。このような主張は、アイヒマンだけでなく多くの戦犯が行ったもので、組織の命令や権威に従うあまり、倫理的な判断を失ってしまう現象を象徴しています。

ミルグラムの実験は、被験者に「他者に電気ショックを与える」という指示を受けさせ、上位者(権威)からの命令がある限り、多くの被験者が指示に従い続けたことを示しました。これにより、人は権威に従うことで、自身の責任を軽視する傾向があると判明しました。この盲従が、社会における大きな危険性を孕んでいることを、この実験は浮き彫りにしました。

また、この実験と関連して、イスラエルの諜報機関「モサッド」が行ったアイヒマン逮捕も注目に値します。アイヒマンは戦後逃亡していましたが、モサッドによりアルゼンチンで逮捕され、裁判の場に立たされました。この裁判での証言を通じて、権威に従うだけで倫理的な判断が曇ることがどれほどの惨事を招きうるかが再認識され、ミルグラムの法則が示す警告が、いかに重要であるかが浮き彫りになったのです。

ミルグラムの法則は、ビジネスシーンや日常生活でも考慮すべきものです。上司や組織からの指示をただ無批判に従うだけではなく、必要な場面では自分の倫理的な判断を持つことが大切です。権威を盲信し、自分の行動を合理化することで責任を逃れるのではなく、冷静な目で行動を見つめ直すことが、健全な社会の基盤となります。

ミルグラムの法則は、組織や社会における権威の持つ力の影響を理解し、よりよい判断と行動を選び取るための教訓といえるでしょう。


自己啓発書ランキング
自己啓発書ランキング

にほんブログ村 本ブログ 自己啓発書へ
にほんブログ村